連載第1回
メルセデス・ベンツ日本株式会社 
代表取締役社長兼CEO 上野 金太郎さん

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●若い人にはいろいろな経験を

阿川:今、御社に入ってくる若い人はどんな人が多いですか。

上野:弊社では例年、新卒の学生を4~8名ほど採用しているんですが、内定が出てから入社までの間の心がけみたいなものはないかと聞かれるんですね。あんまり勉強していなかった私が言うのも変ですが、何しろ大学にいるうちは勉強しなさいよと(笑)外国人の感覚では大学の時に何を学んだのかというのが一番先に飛んでくる質問です。『私は社会科学』と言ったらなんでこの会社で働いているんだと言われました。日本の場合は、その辺が少し外国とは違うと思いますが。

弊社の場合新卒入社の人は、会社に対するロイヤルティが高いと思います。1年に4~8名しか採用しないので、結構狭き門なのかもしれませんが、皆、語学が達者で、とても元気で礼儀正しいです。弊社の若い人たちは、就職難の時代を戦いぬいてきているので、世の中が悪いとかボヤク人もいないですし、意見もはっきり言いますね。

阿川:素晴らしい人材ですね。しかし今までなかったような現場に出くわした時にちゃんと乗り超えられる野性味のようなものはどうですか。

上野:そうですね、実はそれを私は一番懸念していて、あえてそういう状況を作らせようと考えています。ですから新卒入社の人たちは、2~3年で部署がえします。私自身が次から次へといろいろな部署を経験させられましたクチなので、自分が今何をやっているのかということを体感させ、苦しいことも悲しい思いもしながらやっていく状況が待っているということをちゃんと認識してほしいと思っています。
たとえばここは、車の試乗は出来ますが、車を売らないショールームなんです。そこでレストランやカフェの経営や、人の流れなども覚えてもらう。これを技術系の人にいきなりやらせてみることもあります。『音をあげてもいいから、出来ることをやってみろ』というふうに立ち上げたのですが、見事に成功したので2店舗目も立ち上げました。
でもその人は、ここから引きあげて、今度は全国の営業関連をやらせています。せっかくここまでやったのに何故と思ったかもしれませんが、会社を色々な角度から見てほしいと思っています。そういうチャレンジを見て周りの人間が「俺もやらなきゃ」というふうに手を挙げる人たちが出てきます。私たちもチャレンジャーには成功してほしいので、色々と檄も飛ばしますが、しっかりサポートしていきます。

阿川:厳しいやり方で、若い人は残りますか。

上野:最近は残りますね。今のマネージャーの半数以上が新卒採用の人材です。そういう人たちが後輩に色々と伝えていってくれていると思います。また逆にマネージャーレベルでも次の世代がすごい勢いで伸びてきているので、オタオタしていられないという雰囲気はあります。

阿川:プロパーで社長になられたのは、上野さんが初めてですか。

上野:そうなんです。たまたま前任社長が中国社に異動になる際に私を後任に推してくれたのです。車の販売の営業成績も認められたとは思いますが、まだ2年もたってないので、私自身が今、歯を食いしばって頑張らなければと感じているところです。